劇団イヌカレーとマーサ・グレアムとGoogleロゴ

今日のGoogleロゴは、著名なモダンダンスの開拓者であるマーサ・グレアム氏をアニメーション化したものだった。

実に美しい。思わず流れるような動きに見とれてしまった。そしてこのアニメーションの制作者であるRyan Woodward(ライアン・ウッドワード)氏の他の作品を見て、さらに目を奪われた。

是非、以下の動画を見て頂きたい。一見の価値がある。
Thought of You on Vimeo

ライアン・ウッドワード氏はスパイダーマンシリーズやアイアンマン2などのアニメーションを手掛けているそうだ。ハイテクを駆使した3Dアニメーションが主流で、こういった手書きテイストの手法はあまり用いられていないのではないか、と勝手に思っていたが、全く意識を改められた。

同時に、むくむくと「アニメーションでしか出来ないこと」への感動が湧き上がってきた。アニメーションと言っても、リアルな3DアニメーションやCGではなく、あくまで「絵を動かす」という手法により表現されるもののことだ。この動画の美しさは、腕や体の描く軌跡の描写、現実にはあり得ない肉体の変形や強調などをうまく用いているように思う。

つい最近も、同じことを感じた。どうも最近まどか☆マギカの話題ばかりになってしまって反省するが、異空間設計を担当している劇団イヌカレーの表現を目にしたときである。

あの表現は、3Dモデルを作って動かすというCGの手法ではなく、描かれた絵を動かすというアニメーションでしか為し得ないものだと感じた。劇団イヌカレーによるデザインではないが、まどか☆マギカ9話で、さやかと杏子の血が混じり合い、二人の絵を形作るようなシーンも同様だろう。

さらに言えば、シャフトがよく使う手法だが、現実の空間を無視し、演出を優先した画面を描くのも同じだ。例えば、下のシーンにおいて、出入り口のない展望台は現実を考えると明らかにおかしいが、視聴者に与える印象を優先した画面設計を行っているのだろう。(まどか☆マギカの演出については、こちらで秀逸な記事があるので是非参照されたい)

アニメは、3DアニメーションやCGと同じ地平を目指す必要はない。むしろ、「絵を動かす」という点において、さらに大きな表現の可能性を持っている。一人の受け手としては、海外の波に押されず、アニメでしか為し得ない表現の妙をこれからも堪能したい、と思うのだ。